第10章:華僑・華人と風水

華僑・華人と風水

風水、と聞くと皆さんはどんなイメージを持つでしょうか。

もしかしたら占いのような、スピリチュアルなものだと思う方が多いかもしれません。

実際のところ、風水とは、中国の歴代皇帝たちが都やお城や寺院の建築、戦の戦術など、国家レベルの重要な意思決定をするために使われ、発展してきた技術です。

中国の長い歴史を考えるうえで、風水に関する知識は外せません。もちろん、華僑・華人の人々の生活や考え方にも風水が深く関わっています。

本章では、風水の本場・香港に焦点を当て、華僑・華人と風水の関りについてまとめます。

陰陽思想とは

風水は今から3,000年近くも前の中国から伝えられる「陰陽思想」と「五行思想」に基づいています。 

まず、「陰陽思想」とは、自然界に存在する全てのものが「陰」と「陽」いずれかの性質を持つという考え方。

明・暗、新・旧、男・女のように相対する性質を持つものがお互いをバランスよく支え合っており、それによって物事の調和が保たれている、とするのが陰陽の考え方です。

この世に存在する全てのものに当てはめられえる考え方ですから、人間の健康、生活環境、対人関係、食べ物、季節などあらゆる物事について、陰陽で説明出来るのです。

この写真は陰陽を表す際に用いられる太極図(たいきょくず)というものです。

真ん中の勾玉の模様は見たことがある人も多いのではないでしょうか。

この勾玉模様のうち、黒色(陰)は「静的なエネルギー」、白色(陽)は「動的なエネルギー」を表しています。
陰と陽のどちらかが優れているというわけではなく、も表裏一体で循環するもので、物事の周期やバランスに着目し、分析・予測し、行動の指針とする考え方なのです。

五行思想とは

風水の基本となるもう一つの考え方、「五行思想」とは、あらゆるものを「木・火・金・土・水」 の5つに分類してその関係性で説明するものです。

物の素材について五行を当てはめると、「木」は木製のもの、「火」はプラスチックや化繊類、「土」は陶器、「金」は金属や鉱物、「水」は暗い場所に置いた、陰に属するガラス製品などが当てはまります。

また、物だけではなく、女性は「水」、男性は「火」に属すると考えられるなど、人間に関しても五行が当てはまり、季節や方角、住環境についても風水では五行で説明されます。

五行の関係性には、互いの特性を生かし合う「相生(そうしょう)」の関係と、打ち消し合う「相剋(そうこく)」の、2種類の関係があります。

相生(そうしょう)は、木は燃えて火になり、火によって燃えたものが灰となりそれが土になり、土の中から金属が生まれ、金は融解すると水になり、水は木を育てる、というように、それぞれの素材が他のものを生かす関係性です。

反対に、相剋(そうこく)では、水は火を消し、火は金属を溶かし、金属は木を傷つけ、木は土の養分を吸い成長し、土は水を濁すという、素材の特性を打ち消し合ってしまう関係性です。

風水では5つの要素の相生(そうしょう)と相剋(そうこく)の関係で、物事を説明しているのです。

華僑・華人と風水の関係

説明が長くなりましたが、そろそろ本題の華僑・華人の人々と風水との関りについて考えましょう。

先述したように、風水は古代中国の時代から権力者たちに利用されてきた考え方です。

都市の構造、寺院の建築、他国との戦争の際の戦術など…風水に基づいて古代の中国人は社会を構築し、国を守ったり領土を広げたりして歴史を重ねてきました。

そして、代々の華僑・華人の人々も風水を重視し、ビジネス、住環境、人と人の関りについても陰陽や五行の考えを取り入れ、意思決定を行って来ました。

先ほど挙げた太極図にも表されているように、世の中の全ての事柄には表と裏があります。

華僑・華人の人々はビジネスにおいて、良い面と悪い面を冷静に見極め、バランス良い決断が出来るようにしているそうです。

絶対に成功するビジネスなんて存在しませんし、かと言って安全な道だけ選ぶわけにもいきません。選択を迷うような場面で、風水的な考え方が役に立つのです。これはビジネスだけでなく、対人関係や投資先の決定などにも応用されているようです。

そして、太極図が示すもう1つのポイントは、物事の流動性についてです。

現在成功していたとしても、その状態が永遠に続くわけではありません。現状に甘んじず、これからも発展していけるようにリスク管理をしておく必要があります。

バランス感覚とリスク管理

まさにビジネスで大きな成功を収める華僑・華人らしい考え方です。

彼らの繫栄の基礎には風水があったのですね。

風水の本拠地・香港

香港は風水が一番盛んな街として有名です。

香港では、大企業のビルの建築にも風水的な知識が活かされています。

この写真は、香港を拠点とする世界的な大企業、HSBCのオフィスです。このビルの海に面した側の土地は広く開け、遮る物がないようにされています。建物の中も吹き抜けにするなど、風水上重要とされる気の流れを遮らず、幸運をもたらすようなデザインになっています。

また、香港の街並みを見ると、赤色や黄色、金色がよく使われています。

香港に限った話ではありませんが、赤や黄は中国の人々に大変好まれる色です。

赤は太陽と同じ色で、情熱やエネルギーという意味合いを持ち、仕事運や決断力、健康運を上昇させると言われています。また、黄色は皆さんもイメージがわきやすいと思いますが、金運アップを表します。

私たちが中国についてイメージするあれこれについても、風水的な考え方が活かされていることがわかりますよね。

今年は辰年。

実は風水では「龍」が非常に縁起の良いものとされ、成功や発展を表す存在として知られています。

ぜひ皆さんもこの機会に風水に関する知識を取り入れ、ビジネスや生活に生かしてみてはどうでしょうか。

参考ページ

・Allaboutマネー「なぜ華僑のお金持ちは、風水を重視するのか?」https://allabout.co.jp/gm/gc/443282/

・PandaTravel「【保存版】香港における風水の立ち位置とは?徹底解説します。」

https://note.com/pandabus/n/n9acf49c0d79d

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